岩城信嘉展

期間:2011年9月27日 ~ 2011年12月11日
場所:砺波市美術館 2階 常設展示室
時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
常設展示 岩城信嘉展によせて

富山県南砺市城端を拠点に、世界を視野に入れて活動した岩城信嘉(いわき・のぶよし)は、平成20年11月17日に亡くなりました。享年73歳。没後3年に際し、常設展示室において岩城信嘉展を開催いたします。

昭和10年、城端に200年続く石材業の家に生まれた岩城は、高岡工芸高校を修めた後、祖父を援け十代目の石工として家業を継ぎながら彫刻家の道を目指します。石の造形作品に取り組み、昭和35年から行動美術協会に参加。造形作家としてのキャリアをスタートさせています。建畠覚造、向井良吉ら同会の重鎮とも親しく交わり、シャープでモダンな作風が認められやがて同会で頭角を現すところとなります。また、昭和58年に宇部の現代日本彫刻展(戦後始まった国内最大の野外彫刻展)で大賞を獲り、石の造形作家として不動の地位を築きました。

昭和59年、50歳を目前に岩城は突如、そうした表現手法を捨て、アースワークに取り組み始めます。アースワークとは、自己の表現手段として、自然に、何かしらの痕跡をあたえ作品とする、アクション的な要素をもった活動です。自然に仕掛け、我々の身の回りのさまざまな事象について考えさせる、壮大な取組みをしたのです。

具体的には、千里浜で、波打際に高さ5メートルにもなる巨石を置き、潮の満ち干によって倒れるまでを作品化する。一方では城端の東西原に、長さ120メートルの細長い溝を掘り、そこにできる影を印して、刻々と変わる太陽の移動を示すといったものでした。太陽、海、土を使って、我々の生がこれらによって支えられていることを示しています(因みに後年のアースワークは、より自己の生を追求するものへと深化していきます)。

平成元年11月、岩城はカリフォルニアの大学の招待でアメリカ、サンディエゴのラフォイヤ海岸でアースワークを行いました。3つの石を潮の干満で倒伏させる、彼のアースワークの総決算ともいうべきものでした。テレビでも紹介され、高校生だった筆者も当時、そのVTRを見て、何だかわからないが、すごい人がいるものだと思ったものです。

また、ほぼ10年後にあたる平成11年には、立野ヶ原クアガーデンが造成される場所で、4つのアースワークを行っています。

アースワークはいずれも仮設作品なので、いまそれらを見ることはできません。言わばのこらない作品。こうした仕事であると分かっていたから、安齊重男、成田弘といった著名な写真家に撮影を依頼し、中原佑介に批評してもらい、作品カタログの編集にも積極的に取り組んだのでしょう。

平成21年の晩秋に当館で「N291 Iwaki岩城信嘉展」を開催しました。N291 Iwakiとは岩城信嘉の変名で、平成9年よりそう名乗ったのでした。岩城のアースワークは平成18年までの間に16を数えます。会場では16あるアースワークの、およそ半分を紹介しているのではないでしょうか。これらの写真からは、自らの本当の表現とは何かを追求し、現代美術のフィールドにおいて果敢に挑戦しつづけた表現者の姿が伺えます。

見方によっては酔狂ともいえなくもないこうした仕事の数々をあらためて見るにつけ、忘れかけていた冒険心をくすぐられたかのような気分にさせられます。そうした意味において、岩城信嘉は稀有な美術家といえます。



観覧料
一般200円[160円]、小・中・高100円[80円]
[ ]内は20名以上の団体料金、65歳以上の減免料金
児童・生徒の教育活動(引率者を含む)および身障者(介護者1名を含む)の観覧無料
砺波市おやこ優待割引:親子で常設展示を観覧される場合、小学生および中学生の観覧無料


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